――ゴンゾウ、合コンで需要が発生する
2026年04月14日
――ゴンゾウ、合コンで需要が発生する
鈴木ゴンゾウが合コンに参加することになったのは、
完全に人数調整だった。
「ゴンゾウさん、
あと一人足りないんです!」
後輩のアコムが、
半ば土下座の勢いで言った。
「……何の話だ」
「合コンです」
「……帰る」
「待ってください!」
ゴンゾウは、
合コンというものに興味がなかった。
目的が曖昧だ。
関係が浅い。
時間が長い。
「……意味が分からん」
「意味とかじゃないんです!」
「……なら、なおさら分からん」
だが、
最終的に押し切られた。
「座ってるだけでいいんで!」
「……座るだけか」
「はい!」
その言葉を信じた。
店に入る。
半個室。
すでに女性陣が座っている。
「こんばんは〜!」
明るい。
テンションが高い。
(……疲れるな)
ゴンゾウは静かに座った。
「えっと、
こちらが……」
「鈴木だ」
それだけ言った。
空気が、
一瞬だけ止まった。
(……やはり来るべきではなかったか)
だが、
数秒後。
「え、渋くない?」
女性の一人が言った。
「……何がだ」
「なんか、
落ち着いてる感じ」
ゴンゾウは、
何もしていない。
ただ座っているだけだ。
乾杯。
会話が始まる。
若手たちは頑張っていた。
「趣味は何ですか?」
「休みの日は?」
「最近ハマってることは?」
ゴンゾウは、
黙っていた。
話す必要がないと思ったからだ。
だが、
なぜか視線が来る。
「鈴木さんは?」
「……特にない」
「え〜、逆に気になる!」
逆とは何だ。
しばらくして、
女性の一人が言った。
「鈴木さんって、
怒らなそうですよね」
「……怒る時は怒る」
「でも普段は?」
「……怒らない」
「いい〜!」
何がいいのかは分からない。
だが、
空気は悪くない。
さらに別の女性。
「なんか安心感ありますよね」
「……そうか」
「うん、
変にガツガツしてないし」
ゴンゾウは、
ガツガツしたことがない。
必要がなかったからだ。
一方、
若手たちは苦戦していた。
「いや、自分も落ち着いてますよ!」
「最近ジム行ってて!」
「筋トレとかどうですか?」
空回りしている。
ゴンゾウは思った。
(……なぜだ)
料理が来る。
ゴンゾウは普通に取り分けた。
「……どうぞ」
「え、優しい」
「いや普通です」
「普通にできるのすごいです」
普通が評価されている。
意味が分からない。
終盤。
「連絡先交換しましょう〜!」
女性たちが言った。
なぜか、
ゴンゾウの前にスマホが並ぶ。
「え、
鈴木さんもいいですか?」
「……必要か」
「はい!」
必要らしい。
帰り道。
若手たちは沈黙していた。
「……ゴンゾウさん」
アコムが言った。
「なんであんなモテるんですか」
「……モテているのか?」
「モテてますよ!」
ゴンゾウは考えた。
何もしていない。
ただ、
普通にしていただけだ。
「……分からん」
「いや分かってくださいよ!」
若手は頭を抱えた。
「自分たち、
めっちゃ頑張ったのに……」
「……頑張りすぎではないか」
「え?」
「力が入りすぎると、
疲れる」
ゴンゾウは言った。
「見ている方も、
疲れる」
若手たちは黙った。
電車の中。
ゴンゾウは窓の外を見ながら思う。
昔は、
何も考えなくても
関係はできた。
今は、
考えすぎて
関係ができないのかもしれない。
「……難しいな」
だが、
一つだけ分かったことがある。
何もしないことも、
一つの強さだ。
それが、
たまたま今日は
評価された。
それだけだ。
(了)
